札幌市 石狩市 合気道道場

北海道春風館

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草枕日記 第十五話

 14日午前11時半、途中2度ほどタイヤがパンクしたり、フランスの女の子が熱射病で倒れたり, 湖の蜃気楼に向かって歩き出す自分に驚いたりもしたが、何とか全員無事Agadezに到着する。(この町に近づく頃から大地には草が覆い、とげのある低木が顔を見せ始めた。やっと砂漠も終わりに近づいている)すぐに警察で入国手続を済ます。

 そうです。ここはアフリカ3番目の国「Niger」なのです。しかしこの辺は強烈に蒸し暑い、現地の人々も顔は真っ黒だ。歯の白さだけが異様に目立つ。(そうですここからが『Black Africa』の始まりなのです。)しかし物価は非常に安いお茶一杯(ブリキの缶で飲む)が5F(日本円で7円位)、パンが一個10F。
 しかしこの町には何もなく、その夜にはすでに764km離れた「Niamey」という町へ行くトラックの上に居ることになる。途中からは緑の木々が目にまぶしく飛びこんでくる。いよいよ砂漠ともお別れだ。
 この長い砂漠の旅は私にとっては余程強烈だったらしく、当時の日記には下記のような文が載っている(ちょっと恥ずかしいが原文のまま書く事にする)

まだスイスを離れて2ヶ月ちょっと、ましてやアフリカに入ってから1ヶ月と20日位しかたっていないのに、俺が何故アフリカに来たか?という目的の半分以上が達せられたような気がする。それもこの2~3日の内に突然頭に浮かんだもので、今は何故かそれが俺が今まで捜し続けてきたもので、日本では発見出来ず(あんな騒がしい所では所詮無理なのだが)ヨーロッパでも同じく見つけられなかったもの、つまりこれは何故日本を離れたかという目的に繋がりそうだ。 結局つまる所、俺が生を受けてから23年と10ヶ月の間求め続けて来たものが今やっと俺の手中に入ろうとしている。 最近では俺が高校を出てから大学の受験も就職もしなかったのも、その2年後俺が大学受験をやめて観光学校へ入ったのも何かの因縁があり、すべてこの目的につながるのだろう。そしてバイト先である『京浜サービス』(バイト斡旋業)へ入ったのも、粟飯原という友人を得たのも。何故なら俺がヨーロッパへ来ようと思ったのも、学校の先輩の数人、そして同輩の数人が海外へ出て行くのを見聞きし、又『京浜サービス』の先輩斉藤さんがスペインへ旅立つのを見、粟飯原も又俺と同じ悩みを持ち、彼が友達になった名子さん、コウケンさんがヨーロッパへ行くのをこの目で見てきたからだ。つまりこの23年11ヶ月は今日の為にあったのだ。
 

 さてそれとは一体何か、俺が何の為に生まれてきたのか?、俺のこれからの取るべき道は?自分自信とは一体何か?
 

一つ『俺はこれから一生旅を続けるだろう』ということ 『My Life is all trip』
旅ほど俺自信を悩ませ、苦しませ、又喜ばせ,驚かせてくれるものはなく、旅ほど俺に勉学心を起こさせるものはない。(これは旅が俺の無知をすべてあらいざらい露出させるのと同時に起こる)それは観光学に始まり地理、歴史、地質学、天文学、海洋学、物理学、数学そして哲学までも俺に要求し、時によっては心理学までも。それに経済学、法学、時事問題、料理学、栄養学に医学。そして最も重要な語学。つまり学校で教えるすべての学問が旅には必要とされる。その為に旅人は常に何かについて学んでいるし、学ばねばならない。つまり旅こそ人生そのものである。 何故毎日毎日朝早く起きてネクタイを締め、スーツを着て会社へ行かねばならぬ、何故いやな事を長く続けなければならぬ。これから俺が働くのは旅のためであり、メシを食うのも旅のためである。もし俺の意見に共鳴する女がいれば、俺は一緒に旅することを拒まない、俺達の子供が出来ても俺は一緒に旅を続けるだろう。『学校』そんなものは必要ない.旅こそ学校であり、それ以上のものを教えてくれると信じる。彼がきっとすばらしい人間に育つことを決して信じて疑わない。…・・
『無住 進』これを俺の旅の名前とする。これは山岡鉄舟の『行く先に我家ありけりカタツムリ』に通じるし、芭蕉の“奥の細道”の中の『馬の口とらへて老いをむかえるもの、日々旅とし、旅をすみかととす』にも通じる。これから一生旅をすみかとしようとしている俺にはピッタリの名ではないだろうか。
とにかく俺の本当の人生はこれから始まろうとしているのだ。そのために俺は今生きねばならぬし、そうたやすく死ぬ事は出来ぬ。他の日本人に『こういう生き方もあるんだ』ということを見せるためにも。俺は理論は好きではないので、とにかく態度で示すより他はない。別に人に強要もしないし奨めもしない、ただわかってほしい、俺の気持ちの片端でもいいから、わかってほしい俺の心意気を。道は決まった Go that way ! 」(ほとんど妄想に近いですね)